「会計ソフトで帳簿をきちんとつけているから、うちの資金管理は大丈夫!」
そう思っていませんか?実は、会計ソフトで黒字が出ていても、突然資金ショートに陥る企業は少なくありません。
今回は税理士として多くの企業を見てきた経験から、会計ソフトだけでは見えない資金繰り管理の落とし穴と、その対策方法を分かりやすく解説します。
この記事の内容
なぜ黒字なのに資金が足りなくなるのか?
「利益」と「現金」は別物という真実
会計ソフトの損益計算書を見て「今月も黒字だ!」と安心していたのに、気づいたら銀行残高がピンチ...こんな経験はありませんか?
これは「黒字倒産」の典型的な前兆です。実は、会計上の利益と手元の現金は全く別物なんです。
💭 こんなケースを想像してみてください
A社の場合:
- 3月に100万円の商品を納品(売上計上)
- でも、入金は6月末の予定(3か月後)
- 4月に仕入代金60万円の支払い
- 5月に家賃・人件費40万円の支払い
→ 会計上は40万円の黒字ですが、実際は100万円の資金不足に!
会計ソフトは「過去」を記録するツール
多くの方が誤解しているのですが、会計ソフトの主な役割は過去の取引を正確に記録することです。
つまり、「すでに起きたこと」の整理整頓なんですね。
一方、資金繰り管理で重要なのは「これから起きること」の予測です。
来月の支払いは足りるか?3か月後の資金状況は?
こういった未来の予測は、会計ソフトだけでは難しいのが現実です。
会計ソフトが教えてくれない5つの落とし穴
では、具体的にどんな落とし穴があるのでしょうか。
税理士として実際に見てきた、要注意ポイントを5つご紹介します。
落とし穴1:売掛金の回収遅れが見えない
⚠️ こんな状況は危険信号!
- 売掛金の額が月商の2か月分を超えている
- 特定の取引先の支払いが常に遅れがち
- 「来月には必ず...」という約束が続いている
会計ソフトでは売掛金は「資産」として計上されます。
でも、実際に現金化できなければ、ただの数字に過ぎません。
回収の遅れや貸倒れリスクは、帳簿だけでは見えてこないんです。
落とし穴2:在庫の現金化スピードが分からない
「在庫も資産だから安心」と思っていませんか?
でも、売れない在庫は現金を生みません。
むしろ、保管コストがかかる「お荷物」になることも。
💡 在庫管理のポイント
- 回転率:商品がどれくらいの速さで売れているか
- 滞留在庫:3か月以上動いていない商品はないか
- 季節性:売れる時期が限定される商品の管理
落とし穴3:支払いタイミングのズレ
会計ソフトは発生主義で記帳するため、実際の入出金のタイミングとズレが生じます。
項目 | 会計上の認識 | 実際の現金の動き |
---|---|---|
売上 | 納品時(締日) | 入金時(1~3か月後) |
仕入 | 納品受取時(締日) | 支払時(翌月など) |
人件費 | 労働提供時(締日) | 給料日 |
落とし穴4:税金の支払い時期を忘れがち
決算で利益が出れば、当然税金の支払いが発生します。
でも、会計ソフトの月次試算表を見ているだけでは、いつ、いくら税金を払うのか意識しづらいですよね。
📅 主な税金の支払いスケジュール
- 法人税・消費税:決算後2か月以内
- 予定納税:中間期(事業年度開始から8か月後)
- 源泉所得税:原則翌月10日(納期の特例:毎年7/10と1/20)
- 固定資産税:年4回の分割払い
落とし穴5:急な出費への備えがない
機械の故障、取引先の倒産、急な大口受注...ビジネスには予期せぬ出来事がつきものです。
会計ソフトは過去のデータしか扱えないため、こうしたリスクへの備えは別途考える必要があります。
資金繰り表と試算表の決定的な違い
ここまで読んで、「じゃあ、どうすればいいの?」と思われたかもしれません。
答えは資金繰り表の作成です。
試算表 vs 資金繰り表:何が違う?
📊 試算表(会計ソフトで作成)
- ✓ 過去の業績を把握
- ✓ 利益が出ているか確認
- ✓ 税金の計算に必要
- ✗ 将来の資金状況は分からない
- ✗ 入出金のタイミングは不明
💰 資金繰り表
- ✓ 将来の現金の動きを予測
- ✓ 資金不足の時期が事前に分かる
- ✓ 対策を早めに打てる
- ✓ 銀行融資の際に必須
- ✓ 経営判断の重要な指標
資金繰り表で見えてくること
資金繰り表を作ると、以下のような重要な情報が見えてきます:
- 資金不足の時期:「来月に資金がショートしそう」
- 必要な資金額:「最低でも200万円の運転資金が必要」
- 余裕資金の額:「3か月後には500万円の余裕ができそう」
- 投資のタイミング:「設備投資は6月以降が安全」
今すぐできる資金繰り改善のチェックポイント
資金繰りを改善するために、まず以下のポイントをチェックしてみましょう。
会計ソフトのデータと照らし合わせながら、一つずつ確認することが大切です。
1. 売掛金の管理を徹底する
✅ 売掛金管理チェックリスト
- □ 請求書の発行は納品後すぐに行っているか
- □ 支払期日を過ぎた売掛金をリスト化しているか
- □ 督促のルール(いつ、誰が、どのように)は決まっているか
- □ 与信限度額を設定・管理しているか
- □ 前受金や着手金の交渉をしているか
2. 支払いサイクルの最適化
入金と支払いのタイミングを調整することで、資金繰りは大きく改善します。
💡 実践的なテクニック
- 入金を早める:締め日を月2回にする、クレジットカード決済を導入
- 支払いを遅らせる:仕入先と支払い条件を交渉、手形の活用
- 分割払いの活用:大きな支出は分割やリースを検討
3. 在庫の適正化
過剰在庫は「寝かせているお金」です。以下の指標を定期的にチェックしましょう。
📐 在庫回転率の計算式
在庫回転率 = 年間売上原価 ÷ 平均在庫高
※ 回転率が低い = 在庫が滞留している可能性大
4. キャッシュフロー計算書の活用
会計ソフトの中には、キャッシュフロー計算書を作成できるものもあります。
これを活用すれば、お金の流れがより明確になります。
区分 | 内容 | チェックポイント |
---|---|---|
営業CF | 本業での現金の流れ | プラスが基本。マイナスなら要注意 |
投資CF | 設備投資などの現金の流れ | 成長期はマイナスでもOK |
財務CF | 借入・返済の現金の流れ | 営業CFとのバランスを確認 |
まとめ:会計ソフト+αの管理が成功の鍵
ここまで、会計ソフトだけでは見えない資金繰り管理の落とし穴について解説してきました。
大切なのは、会計ソフト+αの管理です。
📌 押さえておきたいポイント
- 会計ソフトは正確な記帳と業績把握に不可欠
- でも、将来の資金予測には資金繰り表(CF予測)が必要
- 両方を組み合わせることで盤石な財務管理が実現
税理士を活用するメリット
「でも、資金繰り表なんて作ったことがない...」という方も多いはず。そんなときこそ、税理士の出番です。
🎯 税理士ができること
- 資金繰り表の作成指導:エクセルのフォーマット提供から作り方まで
- 会計データの分析:問題点の早期発見と改善提案
- 資金調達のサポート:銀行融資や補助金申請の支援
- 経営アドバイス:数字に基づいた具体的な改善策
- 予測と計画立案:将来のリスクに備えた経営計画
今日から始められる第一歩
資金繰り管理は、一朝一夕にはできません。
でも、小さな一歩から始めることが大切です。
🚀 今すぐ始められる3つのアクション
- 現金残高の記録毎日同じ時間に銀行残高をチェックし、エクセルに記録する
- 入出金予定表の作成向こう1か月の入金・支払い予定を書き出してみる
- 売掛金リストの整理取引先別・期日別に売掛金を整理し、回収状況を確認
最後に:健全な資金繰りが事業成長の土台
会計ソフトで作る決算書は、いわば「成績表」です。
一方、資金繰り表は「健康診断書」のようなもの。
どちらも大切ですが、健康でなければ良い成績も残せません。
黒字倒産という言葉があるように、利益が出ていても資金がショートすれば事業は続けられません。
逆に、しっかりとした資金繰り管理ができていれば、一時的な赤字でも乗り越えることができます。
会計ソフトと資金繰り表、この「2つの武器」を上手に使いこなして、安定した事業経営を実現しましょう。
そして、困ったときは遠慮なく税理士に相談してください。
私たちは、あなたの事業の財務パートナーとして、全力でサポートいたします。