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​「レジからちょっと拝借」が会社を弱くする。公私混同をなくせば、店にお金は驚くほど残る【脱・どんぶり勘定】

「今日は手持ちがないから、レジから1万円借りておこう」
「個人的な買い物だけど、手元にあった会社のカードで決済してしまった」

もし、あなたが日常的にこのような行動をされているなら……。
その「ほんの少しの甘え」が、会社にお金が残らない最大の原因になっているかもしれません。

今回は、なぜ「財布を分けないこと」が経営のリスクになるのか。
法人・個人事業主それぞれの視点から、税理士しか知らない「お金の裏側」を解説します。

1. その1万円は「給料」ですか? それとも「借金」ですか?

まず、根本的な認識を変えましょう。
「お店のお金(事業資金)」と「社長個人のお金(プライベート資金)」は、明確に区別すべきものです。

社長が理由なくお店のお金を使うと、会計上はどう扱われるのでしょうか。

🏢 法人の場合 役員貸付金

会社が社長にお金を貸している状態。
つまり「社長の借金」です。
決算書にこれが載ると、「社長、いつ会社に返してくれるんですか?」と問われ続けます。

👤 個人の場合 事業主貸

お店の元手(資本)を取り崩して生活している状態。
借金ではありませんが、「利益 > 事業主貸」になっていないと、お店の体力はどんどん削られていきます。

「俺の会社(店)だぞ!」と言いたくなる気持ちは分かりますが、
ドンブリ勘定でレジからお金を抜く行為は、自分のお店の「首を絞める」行為なのです。

2. 銀行は「生活費の使いすぎ」を厳しく評価する

公私混同がもたらす最大のデメリット。
それは、法人・個人問わず「銀行融資のハードルが上がってしまう」ことです。

法人の場合:評価は「最悪」になる

銀行員は「役員貸付金」を見ると、「この会社はガバナンスが効いていない」と判断します。
「我々が貸した運転資金も、事業のためではなく、社長のプライベートな支出に流用されてしまうのではないか?」と疑われるからです。

個人の場合:「返済能力なし」とみなされる

個人事業主の審査では、お店の「利益」だけでなく、「生活費(事業主貸)」のバランスを厳しく見られます。

【銀行が見ている計算式】

(利益 + 減価償却)- 生活費 = 返済できるお金

いくらお店が黒字でも、社長がレジからお金を抜きすぎていて、ここがマイナスになっていれば…

「社長、生活費を使いすぎていて、返すお金がありませんよね?」

と判断され、融資は通りません。

いざ「店舗改装したい」「2店舗目を出したい」と思った時に、銀行から「まずは公私混同を直してください」と言われてしまう。
その時になって後悔しても、すぐに解消するのは難しいのです。

3. 税金面での思わぬペナルティ

さらに、税金面でもリスクがあります。
会社のお金を私的に使い、それが税務調査で「事業に関係ない支出」と判断された場合。

法人の場合、それは単に経費から外されるだけでなく、「役員賞与(ボーナス)」と認定されるリスクがあります。

  • 法人税が増える: 経費として認められないため。
  • 所得税が増える: 「社長はボーナスをもらった」とみなされるため。

いわゆる「往復ビンタ」です。
たかが数万円の積み重ねが、後から大きな税負担となって返ってくることもあるのです。

4. スタッフは、社長の手元をよく見ている

数字の話だけではありません。
スタッフは、社長が思っている以上に、社長の行動を見ています。

レジから現金を抜く姿。明らかにプライベートな買い物を経費で処理する姿。

これを見て、「うちはお金の管理がルーズなお店なんだな」と感じれば、スタッフのコスト意識も低下します。
「まかないのビールくらい、勝手に飲んでもいいだろう」「備品を少し無駄使いしてもバレないだろう」。

お店の利益を圧迫しているのは、実は「社長の何気ない行動」がきっかけになっているかもしれないのです。

5. 公私混同をなくす「3つの具体的アクション」

では、どうすればこの習慣を変えられるのでしょうか。
精神論ではなく、物理的に「できない仕組み」を作りましょう。

  1. 役員報酬(生活費)を決める:
    「足りなくなったらレジから借りればいい」という考えを捨て、決まった金額の範囲内で生活してください。
  2. 財布を物理的に分ける:
    会社用の財布と個人用の財布を持ち歩き、混ぜないようにしましょう。
  3. 法人カードを作る:
    経費は全てカード、個人は現金。こうすれば明細を見るだけで一目瞭然です。

そして、クラウド会計で「ガラス張り」にすることも有効です。
税理士(私)が毎月チェックし、「社長、この出金は何ですか?」とツッコミが入る環境になれば、自然と管理への意識が高まります。

6. 結論:お財布を分けると、なぜかお金が増える

不思議なことに、公私混同をきっぱりやめた社長は、急激にお金が貯まり始めます。
「コスト意識」が芽生えるからです。

財布を分けると、「会社の利益」を守ることが、結果として自分の会社を長く存続させることだと気づきます。

「レジの現金は、お客様からの預かりもの」
「会社のお金は、未来への投資原資」

この当たり前の感覚を取り戻した時、あなたのお店は「個人の商店」から「組織(企業)」へと進化します。

あなたの会社の「お財布診断」します

「どうしても財布が分けられない」「今の自分の状態が税務上問題ないか不安だ」
そんな方は、一度ご相談ください。

当事務所が、決算書を診断し、クリアで健全な財務体質を作るためのお手伝いをします。

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