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原価率を下げるな、「ロス」を削れ。利益率を最大化する「捨てない」在庫管理術

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「また油が値上がりしたのか…」
「野菜も肉も高い。これ以上、どこを削ればいいんだ」

毎月の請求書を見るたびに、ため息をついているオーナー様。
そのお気持ち、痛いほどよく分かります。

コストを抑えるために、多くの経営者はまず「仕入れ」を見直そうとします。
「もっと安い業者はないか?」「ランクを一つ落とした食材を使おうか?」

しかし、少し待ってください。
その判断は、お店の「味(品質)」を落とし、お客様を遠ざけてしまう危険な賭けになるかもしれません。

実は、仕入れ値を変えず、品質も落とさずに、利益を確実に増やす方法があります。
それは、「見えない『ロス(廃棄・無駄)』を徹底的に削る」ことです。

今回は、安い食材を探し回る前に取り組むべき、「捨てない在庫管理術」について。
そして、POSレジと実地棚卸しを組み合わせて「見えない無駄」をあぶり出す手法について解説します。

1. 「安い食材」vs「ロスゼロ」。どちらが儲かるか?

まず、数字を使ってシミュレーションしてみましょう。
月商100万円のレストランで、現在「10%の廃棄ロス(使いきれず捨てる、盛りすぎ等)」が出ていると仮定します。

【現状のモデル店舗】

  • 売上:100万円
  • 原価率:35%
  • 仕入額:35万円
  • 粗利益:65万円

※実は仕入れた35万円のうち、10%(3.5万円)を捨てている状態です。

ここで、原価高騰対策として、社長はどちらの道を選びますか?

プランA:安い食材に変える
(業者と交渉)

頑張って交渉し、仕入れ値を「5%」下げました。
しかし、現場の管理は今まで通り(ロス10%)です。

仕入額:35万円 × 0.95
332,500円
(コストダウン:17,500円)
利益増:+1.7万円

⚠️ 品質が落ち、客離れのリスク大

プランB:ロスをゼロにする
(在庫管理)

仕入れ値(品質)は高いままです。
その代わり、廃棄ロス(3.5万円)を「0円」にしました。

仕入額:35万円 - 3.5万円
315,000円
(コストダウン:35,000円)
利益増:+3.5万円

✨ 品質そのままで、利益はAの2倍!

いかがでしょうか。
「5%の値下げ交渉」をするよりも、「無駄に捨てている10%」をなくす方が、利益額は2倍になります。

「捨てる」ということは、「1万円札をゴミ箱に捨てている」のと同じです。
まずは「バケツの底に空いた穴(ロス)」を塞ぐこと。これが利益率を最大化する最短ルートです。

2. 現場に潜む「3つの見えないロス」

「うちはそんなに腐らせていないよ」と思われるかもしれません。
しかし、ロスには「腐って捨てる」以外にも、見えにくい種類があります。

① 廃棄ロス(期限切れ)

発注ミスや冷蔵庫の整理不足で、食材を腐らせてしまうこと。

② オーバーポーション(盛りすぎ)

これが最大の隠れロスです。「パスタ100g」の規定なのに、感覚で「110g」茹でていませんか?
これだけで原価が勝手に10%上がっている状態です。

③ 不明ロス(つまみ食い・計算ミス)

記録なしのまかないや、伝票漏れ。これらは全て「使途不明金」と同じです。

3. 「理論原価」と「実質原価」のギャップを知る

このロスを見つけるために必要なのが、「POSレジ」「実地棚卸し」の答え合わせです。

STEP 1:POSレジで「理論値」を知る

クラウドPOSレジを使えば、「今月、ハンバーグが何個売れたか」が正確に分かります。
ここから「理論上の消費量」を計算できます。

「100個売れた」×「肉150g」=「肉15kg使ったはず」

STEP 2:棚卸しで「現実」を知る

月末にキッチンで「棚卸し(在庫カウント)」を行います。
前月の在庫と今月の仕入れから、残っている在庫を引けば、「実際に消えた量」が分かります。

計算してみたら… 「肉が18kg消えていた」

STEP 3:ギャップ(3kg)の原因を探る

「計算上は15kgのはずなのに、実際は18kg減っている」
この「差額の3kg」こそがロスの正体です。

この数字が出て初めて、「キッチンの分量が多すぎるのでは?」「保存状態が悪いのでは?」という対策が打てます。
どんぶり勘定では、この3kgの損失に一生気づけません。

4. ロスを減らすための具体的アクション

システムを入れるのは少し先だとしても、今日からできることがあります。

  • 整理整頓(定位置管理): 冷蔵庫がぐちゃぐちゃな店は必ず原価率が高いです。食材の住所を決めてください。
  • 計量チェック: 定期的にスケール(はかり)で盛り付け量をチェックしてください。「5g多い」という気づきが利益を守ります。
  • 捨てないメニュー開発: 余った野菜をスープにするなど、食材を「使い切る執念」を持ってください。

5. 結論:「もったいない」の精神が、店を救う

原価率を下げるために、安くて質の悪い食材に変える。
それは、料理人としてのプライドが許さないはずです。

それならば、今ある「良い食材」を、一滴も無駄にせず、すべてお客様への価値に変える。
その努力をする方が、よほど健全で、利益も残ります。

「利益」とは、お客様からの「ありがとう」の総量から、「無駄」を引いた残りです。

在庫管理の「仕組み化」、お手伝いします

「うちはドンブリ勘定だから、どれくらいロスが出ているか分からない」
「棚卸しなんて、面倒でやったことがない」

もしそう思われたなら、一度当事務所にご相談ください。
POSレジのデータ活用から、無理なく続けられる棚卸しのルール作りまで、
数字が見える化できる仕組みを一緒に作りましょう。

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