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飲食店は「家賃」で9割決まる。契約前に知っておくべき、絶対潰れない固定費の黄金比率

「駅前のあの一等地が空いたらしい! 人通りも多いし、あそこなら絶対に売れる!」
「少し家賃は高いけど、頑張って売ればなんとかなるだろう」

もし、あなたが今、物件選びでこのように心が躍っているなら……。

どうか一度、冷静になって深呼吸をしてください。
まだ契約書にハンコを押さないでください。
そのハンコは、お店の「死亡届」になる可能性があります。

厳しいことを言いますが、飲食店の経営において、「家賃」の失敗は、取り返しがつきません。
味やメニューは変えられますが、家賃という「固定費」だけは、撤退するその日まで首を絞め続ける鎖になるからです。

今回は、税理士の視点から、絶対に店を潰さないための「家賃の黄金比率」について解説します。

1. なぜ、家賃が高いと「即死」するのか?

「家賃が高くても、その分売上が上がればいい」と多くの創業者は考えます。
しかし、経営には必ず「波」があります。

売上は水物ですが、家賃は「鉄」です。
台風で休業しても、売上がゼロの日でも、1円もまけてくれません。

一等地の罠:「大家のために働くな」

「一等地なら広告費がいらない」は半分正解で、半分は罠です。
一等地の家賃には、その集客力がすでに価格に織り込まれています。

つまり、あなたが汗水垂らして稼いだ利益の多くが、「場所代」として大家さんのポケットに移動するだけなのです。

項目 🏢 一等地
(家賃60万)
🏠 二等立地
(家賃30万)
月商 300万円 300万円
家賃比率 20%
(高すぎる)
10%
(適正)
利益への影響 利益ゼロ
(大家のために働く)
30万残る
(給料・投資へ)

「一等地で薄利」よりも、「二等立地で高収益」。
これが、私たち中小企業が目指すべき戦略です。

2. 知っておくべき黄金比率:「FLRコスト」

では、具体的にいくらまでに抑えるべきか。
ここで登場するのが、飲食店の最重要指標「FLRコスト」です。

F(食材)+ L(人件費)+ R(家賃)。
これを売上の70%以内に抑えるのが鉄則です。

【理想的なコスト配分】
Food
30%
Labor
30%
Rent
10%
利益・その他
30%

ご覧の通り、家賃(R)に使える枠は、物理的に「10%」しか残っていないのです。
もし家賃を15%にしてしまったら、その分「食材の質」を落とすか、「スタッフ」を削るしかなくなり、店の実力が低下します。

3. 「家賃は3日分の売上」で考えろ

「売上の10%」と言われてもピンと来ないかもしれません。
そこで、もっとシンプルで、かつシビアな判定基準を伝授します。

契約前の絶対ルール その家賃は、
「3日間の売上」で払えますか?

なぜ「3日分」なのか? それには明確な理由があります。

  • ① 数学的根拠(FLRの限界) 売上の10% ≒ 月30日のうちの3日分。
    これを超えると、食材や人件費を削らざるを得なくなり、商品力が落ちます。
  • ② 経営的根拠(損益分岐点) 「月に3日満席にすれば家賃は払える」という状態を作れば、雨が続いても、不況になっても潰れません。
    これは最強の「倒産防止保険」です。
  • ③ 現場の心理(モチベーション) 「毎月1日〜3日目の売上は大家さんへ。4日目からは自分たちの取り分だ!」
    この感覚が、長く経営を続けるための精神安定剤になります。

「3日で払えない家賃」は、身の丈に合っていません。
このシンプルなルールだけで、大火傷を防ぐことができます。

4. すでに高い家賃で契約してしまった方へ

「もう手遅れだ…」というオーナー様。諦めるのはまだ早いです。
家賃額は変えられませんが、比率を下げることは可能です。

  • 「席効率」を上げる: テイクアウトやデリバリーを強化し、「席を使わない売上」を作ることで、家賃比率を下げてください。
  • 客単価を上げる: 50円、100円の値上げを行い、売上総額を上げてください。

5. 結論:物件探しは「恋」をするな、「計算」をしろ

物件探しは恋愛に似ています。
素敵な外観を見ると一目惚れしてしまいますが、経営者はそこで「冷徹な計算機」にならなければなりません。

「この家賃を払うために、毎日何人の客が必要か?」
「雨が続いて売上が半減しても、家賃を払えるか?」

「良い物件」とは、見た目が良い物件ではありません。
「利益が出る家賃の物件」のことです。

契約前に「家賃診断」しませんか?

もし、今検討している物件が適正かどうか迷っているなら、
ハンコを押す前に、当事務所にご相談ください。

税理士の視点で、その家賃が「天国への階段」か「地獄への入り口」か、
FLRコストに基づいてシミュレーションいたします。

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