FLコストは61%か……。よし、合格ラインだ」
毎月末、試算表や日報を見ながら、このように安堵しているオーナー様。
もしあなたが本気で「スタッフの給料を上げたい」「良い人材を採用したい」と考えているなら、今すぐその安心感を捨ててください。
厳しいことを言いますが、FLコスト(率)だけを見て経営判断をしている店は、ジリ貧になります。
最悪の場合、「優良店だと思っていたのに、気づいたらスタッフが全員辞めていた」という事態になりかねません。
なぜなら、飲食店経営において「率(%)」よりも圧倒的に重要で、かつ恐ろしい指標が存在するからです。
それが、今回お話しする「1人当たり粗利益(生産性)」です。
1. 「FLコスト」の罠:率は優秀でも、店は潰れる
飲食店経営の教本には「FLコストは60%以内に」と書いてあります。
確かに利益を残すための基本ですが、ここに大きな落とし穴があります。それは、「率はあくまで割合でしかない」ということです。
【極端な比較】
- A店: 売上100万円、FL 60% → 利益40万円
- B店: 売上1000万円、FL 60% → 利益400万円
経営指標としての「FL比率」は、どちらも同じ「60%」で合格です。
しかし、私たちは銀行への返済やスタッフへの給料を「%」で支払うことはできません。すべて「円(実額)」で支払います。
FL比率を気にするあまり、「原価率を0.1%下げること」や「早く帰らせて人件費率を抑えること」にばかり血道を上げていると、いつの間にか「縮小均衡」に陥ります。
2. 真の生産性指標:「1人当たり粗利益」とは?
文字通り「従業員1人が、1ヶ月にいくら粗利(付加価値)を稼ぎ出したか」を示す数字です。
なぜ、この数字が「FLコスト」より重要なのか?
それは、この数字こそが「給料の源泉」そのものだからです。
ここで、残酷な現実(数学)をお見せします。
飲食業界の健全な労働分配率(粗利のうち給料に回せる割合)は、50%が限界です。
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1人当たり粗利が「60万円」の店
給料に回せるのは半分の「30万円」。
手取りは「約25万円」が限界。 -
1人当たり粗利が「40万円」の店
給料に回せるのは半分の「20万円」。
手取りは「約16万円」しか払えない。
いかがでしょうか。
「うちの店は忙しい」と言っても、もし1人当たりの粗利が40万円しかなければ、あなたがどんなにスタッフ想いの社長でも、給料を上げてやることは「物理的に不可能」なのです。
3. あなたの店は「ブラック」か「ホワイト」か?
基準値チェック
では、具体的にいくらを目指せばいいのでしょうか。
小規模飲食店における、1人当たり月間粗利益の基準値(目安)は以下の通りです。
はっきり申し上げます。この状態が続くと、お店は「ブラック化」します。
スタッフに十分な給料を払えず、長時間労働でカバーするしかなくなるからです。「忙しいのに儲からない」の正体はこれです。
今の飲食業界の平均的な水準です。
なんとか食べてはいけますが、ボーナスを出したり、余裕を持って有給を取らせたりするのは厳しいでしょう。常に人手不足の不安と隣り合わせです。
ここを超えると、世界が変わります。
業界平均以上の給料を払っても、会社にしっかり利益が残ります。良い人材が集まり、定着し、さらに店が強くなるという「好循環」に入ります。
4. 給料を上げるために社長がやるべき「3つの戦い」
生産性を高めるために、社長が打つべき手は3つしかありません。
生産性アップの近道は客単価を上げることです。10%値上げして客数が5%減っても、利益も生産性も上がります。勇気を持ってください。
手間がかからず粗利が高い。「これが売れれば勝手に生産性が上がる」というAランク商品を作り、徹底的に売ってください。
暇な時間はワンオペにする、仕込み時間を集約する。「働いている時間の価値(密度)」を高めてください。
5. 結論:スタッフを愛するなら、生産性を上げろ
「スタッフは家族だ。だから給料を上げてやりたい」
その想いだけで給料は上がりません。給料を上げるのは、社長のポケットマネーではなく、「現場の生産性」です。
FLコストという「守りの数字」だけを見て安心しないでください。
「1人当たり粗利益」という「攻めの数字」を直視してください。
「うちは、従業員1人が月80万円稼ぐチームだ」
そう胸を張って言えるようになった時、あなたのお店は、給料の高さでも、働きやすさでも、地域でNo.1のお店になっているはずです。
数字は嘘をつきません。
まずは今月の「1人当たり粗利益」、電卓を叩いて計算してみてください。
そこから、本当の経営が始まります。
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