この記事の目次
はじめに
大学院に入ると、自分の解決する課題を見つけないといけません。
研究計画書に書いたテーマを課題とすることもありますが、常にアンテナを張って新しい別の論文テーマを探すことも勉強の一つです。
実務視点からテーマを探す
実務についていると、税法を扱う日々の業務の中で、法律上の取扱いと実務上の取扱いとの間で齟齬を感じる時があります。
例えば、私が実務上から感じた消費法の問題について。
消費税法上、社会保険診療報酬は非課税取引に分類されており、医療機関が保険診療で得た収入に消費税は課されません。
そして、医薬品や医療器械を仕入れた場合、医療機関は消費税を負担しています。
しかし、社会保険診療報酬の金額は全国一定金額(公定価格)で統一されているため、売上金額の自己決定ができず、医薬品や医療器械の仕入れに係る消費税分を最終消費者である患者に転嫁することができません。
また、医療機関は免税事業者又は、課税事業者であっても課税売上割合が低いため、消費税の還付を受けることは難しいので、実質的に医療機関が消費税の負担をしていることとなり、いわゆる損税が生じることとなります。
これが一般企業であれば、収入金額(商品・サービスの価額)は自己決定ができるため、消費税分の負担を最終消費者に求めることができるのは公平性に欠けるのではないかと。
2年に1回、社会保険診療報酬の見直しが行われて、消費税分の報酬は上乗せしていると言われていますが、実際のところの内訳はわかりません。
そもそも医師会が消費税導入時に、消費税の仕組みを理解せずに社会保険診療報酬を非課税にする様に、働きかけたことも問題の根底にはあります。
このように、実務上で見つけた疑問点を学問の世界に落とし込んで考えることで、論文のテーマは発見できますし、興味をもって書いていくこともできるのかなと思います。
ちなみに今はこのテーマで書いてはいませんが・・・
税制改正に関する意見書
実務についていないという人は、税理士会等が出している「税制改正に関する意見書」が参考になります。
これは、税理士会が法の問題点や改善点をまとめた文書です。実務上の視点から書かれた文書で、ここに書かれた問題点はある視点からの実務上の問題点でもあり、法の問題点でもあります。
これをヒントに判例を探していけば、論文のテーマにできそうなものが見つかると思いますし、近年の問題になりやすいポイントを知ることもできます。
これを受けて税制改正も行われていくことになるので、今後の動向を見る上でも、読んでおいて損はないかなと思います。
意見書は各関係機関がそれぞれ出していますが、今回は近畿税理士会と東京地方税理士会のものを下記に載せておきます。
おわりに
論文のテーマ探しは、一つ見つかったからと言って安心はできません。実務上は問題があったとしても、学問的には既に解決された問題であることもあります。
こればっかりは、大学院の教授に意見を聞いかないとなかなかわかりにくいことなので、とにかくテーマとなりうる問題をいくつも探し出して、問題点をまとめて、教授の意見を聞く、の繰り返しが必要です。