この記事の目次
はじめに
「この歯、インプラントなんだぜ?」
と自慢げに話す人は少ないと思いますが、歯の治療費というのは自慢したくなるぐらい高いです。
特にインプラント治療ともなると、数百万円かかることも珍しくなく、
「口の中に高級車を入れているみたいなもんだ」と、冗談めかして言うおしゃれな方もおられます。(こんなお金がかかる冗談はあまりない)
歯の治療は集中的に行いますので、年間合計すると、結構な金額になっていたりします。
私みたいに、数年間歯医者に行っていない方もいるかもしれませんが、もしもの時のために、歯の治療を受けた場合の医療費控除について、まとめておきたいと思います。
概要
医療費控除とは、1年間に家族全員の使った医療費合計が10万円を超えた場合に、一定の税負担を軽減するという制度です。(医療費の上限は200万円です)
添付書類
医療費控除を受けるためには、確定申告書に医療費の領収書を添付する必要がありますが、平成29年より、領収書に代えて、「医療費控除の明細書」で代用できるようになりました。
この明細書には、次の5項目の記載が必要です。
①医療を受けた方の氏名
②病院・薬局など支払先の名称
③医療費の区分
④支払った医療費の額
⑤保険金等で補填される金額
なお、「医療費のお知らせ※」を添付する場合には、「医療費控除の明細書」に「医療費のお知らせ」の合計額を記載することが可能です。
※医療費のお知らせは、加入している健康保険団体から定期的に送られてきます。
負担軽減金額の計算方法
医療費控除で軽減される税額の計算式は次の通りです。
{(その年中に支払った医療費の合計額-保険金等で補填される金額)-
(10万円 又は 所得金額の合計額の5%のいずれか少ない金額)} × 税率
要するに、実際に負担した医療費から10万円を引いた金額に、自身の適用税率を乗じて計算した金額が、負担が軽減される金額ということです。
適用要件
次に、医療費控除の適用を受けるための3つの要件を説明します。
①自分、生計を一にする配偶者及びその他の親族が使った医療費であること
②一定の範囲の医療費であること
③実際に支払った医療費であること
それでは、一つずつ見ていきましょう。
生計を一にする配偶者、その他の親族※
納税者と生計を一にする配偶者、子供や親の使った医療費が医療費控除の対象となります。
生計を一にするとは、同居している人だけでなく、別居していても、仕送り等をして生活費の面倒を見ている人のも含まれます。(例えば、下宿している大学生の子、老人ホームに入ってる親など。)
自分が治療するために支出したものはもちろん、同じ財布で生活をしている生計一の配偶者、生計一の血のつながりがある親族の治療費が対象となります。
※ 親族 ⇒ 血のつながりのある人。親族。親戚。法的には、六親等内の血族、および配偶者と三親等内の姻族のことを指します。
医療費の範囲
歯の治療であることが必要ですから、美容目的の歯のクリーニング代等は含まれません。
インプラントや歯の矯正費用は、ケースバイケースですので、医療費控除の対象となるかは、税理士さんへ相談しましょう。
また、治療を受けるためにかかった交通費も医療費控除の対象となります。これは、小さい子供などのための付添人の交通費も対象となりますが、交通機関を利用した場合の費用に限られますので、自家用車を利用した場合の駐車場代やガソリン代は含まれないので、注意が必要です。
支払った医療費
医療費控除の対象となるのは、その年中に実際に支払ったものに限られます。
ただし、インプラントや歯の矯正費用等はかなり高額になる場合がありますので、最近はカード払いをする人も増えてきています。この場合は、実際にカード会社への支払いをした年(カード利用料の引落日)ではなくて、歯科医院でカードで支払った年に医療費控除を受けることができます。
なお、カード払いではなく、いわゆるツケにしてもらって、後日払った場合は、実際に支払った年に医療費控除を受けることができます。
また、医療費控除の証明としては、信販会社との契約書又は領収書を添付する必要があります。
参照条文等
所得税法73条(医療費控除)
所得税法施行令207条(医療費の範囲)
おわりに
近年、インプラントの治療を受ける人は増えてきており、医療費控除の適用を受ける方も増えてきています。
今後、実務でも扱うことも増えてくると予想されますので、条文やタックスアンサー等にのっていることをまとめました。確定申告の時期はまだ先ですが、金額が大きいだけに間違えない様に注意したいと思います。