税理士試験一部科目免除大学院での学びは実務で役に立つのか。
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この記事の目次

はじめに

大学院修士課程を修了し、国税庁へ税法学に関する論文を提出・認定を受ければ、税理士試験科目の内、税法科目2科目について試験の免除を受けることができます。また、会計科目についても同様の条件を満たせば、会計科目1科目について試験の免除を受けることができます。

 

税理士試験の一部科目免除制度は、平成13年に大きく改正され、前記の様な制度へ変わりましたが、それ以前は論文のテーマに関わらず税法科目については3科目、会計科目については2科目の免除を受けることができました。しかし、この制度のままでは、税理士のレベルが下がっていってしまうのではないかと懸念され、現行の制度に改正されたということです。

 

このように、平成13年以前は無試験で資格を取得することができ、いわゆる「ダブルマスター(大学院を2回修了)」の税理士が増えていたので、改正前の大学院免除制度のイメージが強い人の一定数は、今でも大学院での免除に悪いイメージを持っているようです。

 

周りの反応

私が大学院に行くと決めた時、自分にとってはこれが最高の選択だと確信したので選択したんですが、周りの人の反応はいまいちだったような気がします。

私の勤めている事務所では、過去に一部科目免除を受けるために大学院へ行った人はいなくて、私が初めてであるとのことでした。つまり、事務所内では誰にとっても大学院は経験がないことで、みんなが知っていることと言えば、昔にダブルマスターという制度があったということ。そう考えると、当然に大学院に良い印象はないだろうなと思っていました。

 

違いを表現するために

誰でも自分の選択は肯定したいし、他の人に認めてもらいたいという願望があるものです。大学院での免除は決して楽して資格を取る制度ではないですし、実際、大学院での勉強は大変なことも多いです。ただ、これを直接的に説明しても理解は得られないでしょうし、誤解を解くためには、自分の変化を見て感じてもらうしかないのかなと思います。

 

大学院では判決文の読み方や、税法の考え方について教わり、判例研究をする中で実際に条文や通達に当たって判決文を読む練習を積んでいきます。実務でも条文や通達を確認しますが、判決文を読んで条文や通達の解釈を調べて適用できる人はそういません。

 

大学院に行って何を勉強しているのかは、周りの人からしたら分からないことで、知ってもらうためには、何らかの形で大学院で得たスキルを実務に落とし込むことが必要です。

 

例えば、判例等を用いて条文や通達の解釈について他の人と議論してみるのも有効です。また、大学院では判例報告等をする機会が多々あるので、資料作成のスキルや人への伝達スキルも間違いなく上達していますので、大学院で学んだことをそのまま仕事に落とし込むことは可能です。これらは、チャンスがあれば積極的にやっていってほしいと思います。

 

税理士は法律家

私の通う大学院には公認会計士・税理士登録されている先生がおられるのですが、その先生から「税務調査で、税務署と納税者の見解が異なった場合、過去の判例等を用いて意見書を書いてこちらの見解を示す。」と聞きました。これを聞いたとき「税理士って法律家やん」と改めて思いました笑。

大学院では、アカデミックな内容だけでなく、実務的に応用できることもたくさん学べます。学んだ内容を活かすには工夫が必要ですが、視点をたくさん持つことは法律を扱う仕事をする上では大事なんじゃないかなと。

 

おわりに

口には出さないけれど、大学院での免除を良く思わない人は一定数います。まぁこれは仕方がないことで、受け入れていくしかありません。ただ、そういった人がいたとしても、大学院で学んだことが役に立つということを知ってもらえれば、その誤解は少しづつでも解消されていくと信じています。

 

上記で述べたように、大学院では条文や通達に直接あたるだけでなく、判例を通じて間接的視点で条文にアプローチしていく勉強をします。昔、ある弁護士の先生が「税理士は法律家じゃない」と言っていたと聞いた覚えがあります。しかし、私は税理士は法律家であると思っていて、その法律家になる第一歩として大学院での学びは非常に有意義であると実感しています。

 

 

 

 

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