こんにちは、京都市中京区の税理士さとうです。
相続税は、亡くなった方が保有していた財産に対してかかってくる税金です。
相続税は、まずプラス財産(相続財産)からマイナス財産(借金等の債務や葬式費用)を引いて課税価額の合計を出し、ここから基礎控除額を引いて、相続税が課せられる「課税財産の総額」を算出します。
そして、課税財産の総額がゼロ以下の場合には、相続税の申告・納税の必要はありません。
ただ、平成27年の税制改正により基礎控除額が大幅に下がり、全体としては相続税の申告が必要となる人が増えました。
そのため、相続申告なんて関係ないだろうと放置してたら、知らない間に相続税の申告漏れになっていた、、、ということもありえます。
そこで当記事では、知らなかったでは済まされない、相続税計算の全体像を解説していきたいと思います。
この記事の目次
相続税の申告までの流れ
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内となり、例えば☓1年1月1日に亡くなった場合の申告期限は、☓2年1月1日となります。
そして申告期限内にやるべきことは、大きく分けると次の4つになります。
①相続人の調査
②相続財産の調査及び評価
③相続財産を相続人で分ける(遺産分割)
④相続税の申告・納税
税理士が本領発揮できるのは④の部分になりますが、①〜③をしっかりと固めることが④のクオリティに繋がりますので、通常は①〜③についても税理士がサポートします。
相続税の計算方法
基礎控除額の計算
基礎控除額は、相続税の計算で必ず引くことができる金額で、「3,000万円+600万×相続人の数」で計算します。
【具体例】
相続人:配偶者、子2人
3,000万+600万×3人=4,800万
つまりこの場合、相続財産の総額が4,800万以下であるときは、相続税を申告する必要はないということです。
※ただし、財産評価に係る特例を使って基礎控除額以下になる場合は申告が必要です。
財産のピックアップと評価
相続税の対象となる財産は、主に下記のようなものとなりますので、漏れのなようピックアップが必要です。
・相続又は遺贈により取得した財産(不動産、動産、現預金、株式など)
・みなし相続財産(生命保険金、退職金など)
・相続時精算課税により取得した財産
・相続開始前3年以内の贈与財産
相続財産のピックアップが出来たら、相続財産を時価で評価していきます。
時価とは「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」とされています。
うーん、難しいですよね。。。
結局時価と言われても捉え方は千差万別なので、実務上は財産評価基本通達に基づいて評価をします。
(財産評価基本通達)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/01.htm
例えば、預金はそのまま預金残高を使いますし、土地は路線価という国税庁が公表している1㎡あたりの金額を基に計算し、建物は固定資産税評価額を基にして計算します。
このように、それぞれに計算指標がありますので、それに基づいてひとつずつ評価をしていきます。
債務控除・葬式費用
被相続人(亡くなった方)に借金や、支払いが済んでいないものある場合は、その債務を相続財産から差し引くことができます。
また、被相続人のお葬式にかかった費用等があれば、それも差し引くことができます。
ただ、お墓の購入費用や香典返しの費用は、引くことが出来ないので注意が必要です。
相続税を法定相続割合で分ける
先程評価した相続財産の合計額から債務・葬式費用を引いて、課税される金額を算出します。
そしてこの金額を、法定相続人で分けていきます。
分け方は、仮に法定相続割合で分けたとして計算することとなっています。
※法定相続人···民法で決められた相続人
※法定相続割合···民法で決められた相続できる割合
実際の相続財産は、遺言書や相続人同士の話し合いで分けていきますが、民法上は法定相続割合というものが決められていて、相続税の計算上は公平性を担保するため、この割合を使って計算します。
なお、法定相続人は次の順序で優先されます。
第1順位 子
第2順位 父母
第3順位 兄弟姉妹
※配偶者は常に法定相続人
被相続人が亡くなったことによる影響が大きい人ほど、優先順位が高くなっています。
【具体例】
①相続人:配偶者、子2人→配偶者1/2、子1/4ずつ
②相続人:配偶者、父、母→配偶者2/3、父母1/6ずつ
③相続人:配偶者、兄、妹→配偶者3/4、兄妹1/8ずつ
相続税の総額を出す
法定相続割合で分けた各相続人の課税標準額(千円未満切捨)に一定の税率をかけて相続税を算出します。
なお具体的には、下記の速算表に基づいて各人の相続税額を算出し、その金額を合計した金額が相続税の総額となります。
【具体例】
相続人:配偶者、子供2人
法定相続割合:配偶者1/2、子1/4ずつ
相続財産:7,800万円、基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
課税相続財産の総額:7,800万円-4,800万円=3,000万円
子 :3,000万円×1/4=750万円×10%=75万円×2人分=150万円
合 計:175万円+150万円=325万円
以上のような計算で相続税の総額が算出できます。
また、実際の相続税負担は、各相続人が相続する財産の評価額で按分していくこととなりますので、上で計算した金額を各人が負担することはありません。
例えば7,800万円の財産を、配偶者が4,000万円、子Aが2,800万円、子Bが1,000万円相続した場合。
子 B :325万円×1,000/7,800 = 41.6万円
このように按分して計算をします。
相続税の税額調整
各人の相続税負担額を算出したら、そこに相続人各人の状況を考慮して税額の調整が入ります。
具体的には下記のようなものがあります。
・相続税の2割加算
・暦年課税に係る贈与税額控除
・配偶者の税額軽減
・未成年者控除
・障害者控除
・相次相続控除
・外国税額控除
・相続時精算課税に係る贈与税額控除
・医療法人持分に係る税額控除
ざっとこれだけの項目がありますので、一つ一つ適用ができるかの確認が必要です。
まとめ
当記事では相続税計算の全体像を解説してきました。
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内です。
そして、大きく分けると、相続税の申告期限内に下記のことを行う必要があります。
10ヶ月は長いようで短いです。
相続税の申告が必要かどうか、まずは大まかにでも確認しておいた方がいいと思います。。
また、国税庁のHPでも相続税の計算について説明がされておりますので、参考までにURLを記載しておきます。
(国税庁/相続税の計算)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
当事務所では、相続についてトータルでサポートしておりますので、まずは気軽にご相談ください。