取締役の責任について考える。
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この記事の目次

はじめに

株式会社の出資者は、各々が出資した金額によりその会社の株式を取得し、
株主は株主総会によって、業務執行者である取締役を選任します。

 

ただ、家族経営の同族会社であれば、
株主と取締役は同じ人となり、少人数であることが多いので、
実質的に取締役の関係者が全権を握ることになります。

 

これに対して上場企業等は、株主数がかなり多くなりますので、
株主と取締役の法律関係が重要となります。

 

そこで今日は、株主(会社)と取締役の関係について、解説していきたいと思います。

 

(なお、会社自体の所有者は、株式を保有している株主となります。)

 

会社と取締役は委任の関係

取締役は、株主からその会社の運営等についての委任を受けています。
委任とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託すること
(民法643条)をいいます。

 

つまり、取締役は、株主から会社の運営の全部を任されているということです。

 

そして、委任を受けるということは、取締役はその業務執行について
善管注意義務(民法644条)や忠実義務(会社法355条1項)を負います。
また、当該義務をを違反した場合は、取締役の任務懈怠となり、
会社への賠償責任(会社法423条1項)が生じることとなります。
この場合は、株主代表訴訟の対象となります。

 

いろいろと見慣れない単語が出てきていると思いますので、以下簡単にご説明します。

 

善管注意義務

取締役は、委任を受けた内容に従って、善良な管理者の注意をもって、
委任事務を処理する義務を負うことを指しています。
つまり取締役は、これでもかというぐらいに十分に注意して、
日々の業務に当たりなさい、ということです。(厳しいですね)

忠実義務

取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を順守し、
株式会社のため忠実にその職務を行わなければならないとしています。
法律や会社のルールに従って、会社のために頑張りなさいと言っていますね。

任務懈怠

法律において実施すべき行為を行わずに放置することをいいます。
ちゃんとやらないとダメよということですね。

取締役に対する損害賠償責任

取締役は、その任務を怠ったときは、株式会社に対して、
損害を賠償する責任を負うとされています。
つまり、失敗したら責任を取りなさい。ということですね。

株主代表訴訟

株主が会社を代表して取締役・監査役の役員等に対して
法的責任を追及するために提起する訴訟のことをいいます。

利害関係が強い株主から訴えられることになるので、
非常に厳しい結果になることが多いです。

ですから、株主代表訴訟を起こされそうになったら、
会社が自ら訴訟提起をすることもあります。
(身内に責められた方がまだましですよね)

 

おわりに

今日は、会社と取締役の関係について簡単に説明しました。

 

家族経営の中小零細企業の取締役は、株主から訴えられることがほとんどないにしても、
株式会社の運営を行っていく上では、こういった法律関係は知っておいた方がいいかと思います。

 

法律関係を追ってみると、取締役の責任はかなり重いことが分かります。
何となく頼まれたから、取締役をやっているという人も多いかと思いますが、
何かあれば、その責任が問われることもあるということを知っておくことは重要です。

 

 

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