この記事の目次
はじめに
消費税の納税義務者である事業者は、
経理方法を、税込経理又は税抜経理のどちらを採用してもいいことになっており、
その選択によって、消費税の納税額に違いはありません。
しかし、固定資産を取得した場合は、
一時的に所得の金額に違いが出てきますので、
考え方の違いを知っておくことが重要です。
今回は、固定資産を取得した場合の、
税抜経理と税込経理の違いを検証してみたいと思います。
税抜経理方式又は税込経理方式による処理
まずは、国税庁のホームページに基本的な考え方が載っていますので、引用します。
消費税の納税義務者である事業者は、所得税又は法人税の所得計算に当たり、
消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)について
税抜経理方式又は税込経理方式のどちらを選択してもよいこととされています。税抜経理方式による場合は、課税売上げに係る消費税等の額は仮受消費税等とし、
課税仕入れに係る消費税等の額については仮払消費税等とします。税込経理方式による場合は、課税売上げに係る消費税等の額は売上金額、
仕入れに係る消費税等の額は仕入金額などに含めて計上し、
消費税等の納付税額は租税公課として必要経費又は損金の額に算入します。なお、消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、税込経理方式によります。
(下線は私)
税抜経理
税抜経理は、本体部分の金額と消費税を区分して会計処理をする方法です。
以下、ざっくり計算しながら、仕訳をみていきましょう。
・1080円(税込)の売上を現金で受け取った場合
1080 現金 / 売上高 1000
/ 仮受消費税 80
・540(税込)の固定資産(耐用年数10年)を現金購入した場合
500 固定資産 / 現金 540
40 仮払消費税 /
・固定資産(耐用年数10年)の減価償却費を計算した場合 ⇒ 500÷10年=50
(便宜上、減価償却費の計算は耐用年数で除することとします)
50 減価償却費 / 固定資産 50
上記3つの仕訳を切りました。
これらの取引に対する消費税と所得金額は次の通りです。
消費税 ⇒ 仮受消費税80 - 仮払消費税40 = 40(納税額)
所得金額 ⇒ 売上高1000 - 減価償却費50 = 950
税込経理
税込経理は、本体部分と消費税部分を区分しないで、
合算した金額で会計処理をする方法です。
こちらも、ざっくり計算しながら、仕訳をみていきましょう。
・1080円(税込)の売上を現金で受け取った場合
1080 現金 / 売上高 1080
・540(税込)の固定資産(耐用年数10年)を現金購入した場合
540 固定資産 / 現金 540
・固定資産(耐用年数10年)の減価償却費を計算した場合 ⇒ 540÷10年=54
54 減価償却費 / 固定資産 54
同じく、3つの仕訳を切りました。
こちらも消費税と所得金額をみてみましょう。
消費税 ⇒ 売上に係る消費税80 - 仕入に係る消費税40 = 40(納税額)
所得金額 ⇒ 売上高1080 - 減価償却費54 - 消費税40 = 986
※税込経理の場合は、消費税も必要経費(費用)となります。
結果
税抜経理と税込経理を比較してみましょう。
消費税 ⇒ 税抜40 税込40
当たり前ですが、消費税の納税額はどちらの方法を選択していても変わりません。
では、次に所得金額。
所得金額 ⇒ 税抜950 税込986
明らかに違いが出ています。
これを見る限り、税抜経理が有利なような気がします。その差は36です。
しかし、この36は、減価償却を通じて清算されていきます。
既にご覧いただいた様に、税抜経理と税込経理の違いは減価償却費に表れていて、
減価償却費 ⇒ 税抜50 税込54
このような差4が表れています。
そして、所得の差36 ÷ 減価償却費の差4 = 9となり、
固定資産の耐用年数、残り9年でその差は埋められていくこととなります。
つまり、税抜経理は、所得計算に消費税の影響を受けない会計処理
(本来の所得計算の方法)となり、
税込経理は、所得計算に消費税の影響を受ける会計処理
(簡便的な会計処理)であるということがわかりました。
最終的には、どちらの方法を採用していても所得のトータルは同じとなりますが、
「一時で所得を減らしたい」
又は
「固定資産を媒介として毎年均等に所得を減らしていきたい」
の考えの違いによって使い分けが必要です。
おわりに
消費税の経理方法の一つをとっても、その考え方の違いを知っていれば、
自分の意思を示すことができます。
他にも、税抜経理又は税込処理を選択するメリット・デメリットはありますので、
具体的な判断については、税理士への相談が必要です。
いずれを採用するにしても、その違いは知っておきたいところです。