相続税額の負担金額を決定するあん分率とは?

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はじめに

こんにちは。税理士のさとうです。

 

相続税を計算する際には、まず相続人を確定し、相続財産・債務の洗い出し、財産評価、相続税の算出をし、計算過程はかなり複雑です。

 

基本的なことは税務署で教えてくれますし、ネットでもある程度断片的な情報も拾えるため、相続税申告をご自身でされる方もいらっしゃいます。

ですが、そういった申告書を見ると、やはり知らないで損していることは多々あるなと。

 

私も相続に関する相談や実務に当たる中でよく見かけるのが、特例のことを知らないで損していたり、第二次相続のことを考慮せずにトータルで税負担が重くなっていたり。

 

その中でも恐らく一般の方はほぼ知らない「あん分割合」の規定(相基通17-1)。

相続人毎の相続税負担金額を算出するために用いる割合、に関する通達の話ですが、この取り扱いを知っているかどうかで相続税負担が大きく変わることもあります。

 

ちょっとマニアックですが、今日はその「あん分割合」について解説していきたいと思います。

 

相続税のあん分割合とは?

相続税のあん分割合とは、相続税の計算過程で乗じる割合のことです。

具体的には、課税相続財産の総額を算出し、相続税の総額を算出した後に、各相続人が実際に取得した相続財産の割合に基づいて算出する割合のことを言います。

 

では例をもって解説していきます。

課税相続財産の総額:1億3,000万円

被相続人:夫

相続人:3人(妻、実子2人)

各相続人の相続財産の価額:妻7,300万円、子各2,850万円

相続税の総額:1,135万円
各相続人の相続税負担額:妻637.35万円(配偶者の税額軽減で負担ゼロ)、子各248.82万円
あん分率の計算式は下記のとおりです。

各相続人が実際に取得した財産の課税価額/相続時の課税価額の総額=あん分割合

 

実際のあん分割合の計算
妻7,300万÷1億3,000万=0.561538

子各2,850万÷1億3,000万=0.219230

 

なお、相続税基本通達17-1には、次のように規定されています。

法第17条に規定する「財産を取得した者に係る相続税の課税価格が当該財産を取得したすべての者に係る課税価格の合計額のうちに占める割合」に小数点以下2位未満の端数がある場合において、その財産の取得者全員が選択した方法により、各取得者の割合の合計値が1になるようその端数を調整して、各取得者の相続税額を計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。

 

つまり、上で計算したあん分割合において、小数点以下2未満の数字が出た場合は、全部の割合を合計して1となるのであれば、相続人全員の同意がある場合に限り自由に調整できるということです。

特に考慮しないのであれば四捨五入でも良いんですが、調整することによって数万円~相続財産が多ければ数百万円変わることもあるので、一度は検討しておきましょう。

 

あん分割合の調整

では、どのように調整するのがいいのでしょうか。

ずばり、次の通りにするのがいいでしょう。

①配偶者の税額軽減を使えるのであれば、配偶者のあん分割合を上げる。

②相続税の2割加算(法定相続人以外が相続した場合に加算)がされる相続人のあん分割合は下げる。

③その他の税額控除で、控除しても控除しきれない金額がある相続人のあん分割合を上げる。

 

先程の例に当てはめると、妻が「配偶者の税額軽減」を使えるので、①に従い妻の税額が増えるように調整したほうが全体の税負担は減ります。

あん分割合の調整:妻0.562→0.568、子各0.219→0.216

とすることにより、子の各税負担は次のように変わります。

248.82万円→245.16万円 差し引き3.66万円減額

 

妻は配偶者の税額軽減を使うので税負担はゼロになり、子は3.66万円×2人分=7.32万円の減額となります。

 

この3パターンを守れば、相続税の総負担額は減りますので、これを念頭に置いて、いくつかのパターンをシミュレーションしてみましょう。

 

まとめ

本日は、相続税のあん分割合について解説してきました。

相基通17-1には、あん分割合の小数点以下2位未満の数字については調整できることが規定されていることが分かりました。

また、相続財産が多いほど、あん分割合を調整することにより相続税の総負担額が減ることも分かりました。

 

特例などがいろいろ絡んでくるため複雑ではありますが、まずは数パターンは具体的シミュレーションをしてみることをおすすめします。

わからない場合は一度税理士に相談してみましょう。

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