役員報酬の決め方、税法に基づいた設定方法

こんにちは、税理士の佐藤です。

役員報酬は、会社の役員に支払われる報酬(給与)であり、金銭以外の経済的利益も含まれます。

役員報酬を法人の費用にするためには税務上のルールがあり、毎月定額を支給することや変更時には株主総会等において決議する必要があります。

本記事では、役員報酬に関する基本的な内容から、報酬額の決め方や税法上のルールなどを詳しく解説していきます。

 

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この記事の目次

役員報酬の相場と変動要因

役員報酬の金額は、企業の業績や経営者の方針等、平均金額等により総合勘案して決めることになります。

また、会社規模や業界、その役員の役職や実際の業務内容等によっても異なります。

以下では、役員報酬の相場に関わる要因について詳しく説明します。

 

会社規模との関係

役員報酬の相場は会社規模によって異なり、売上規模(利益)が大きいほど役員報酬も高く設定する傾向にあります。

これは、規模が大きい会社ほど経営リスクも高まり、それに応じて報酬も高く設定するからです。

しかし、規模だけで判断するのではなく、業績や業界の相場に照らし合わせることが重要です。

 

業界との関係

業界によっても役員報酬の相場は異なります。一般的には、金融やIT、製薬業界などは報酬が高い傾向にあります。

これは、それぞれの業界において利益水準や競争力が高いため、役員報酬も高く設定されることが多いからです。

同業他社と比較して不相当に高額な役員報酬を設定すると、税務上の問題が発生することがあるため、業界の相場を把握し適正な報酬を設定することが重要です。

 

役員報酬の決定方法

役員報酬の決め方は株主総会の決議を経て行われます。(取締役会設置会社の場合は、総額を株主総会で決議し、各取締役の報酬を取締役会で決定することもできます。)

また、役員報酬の決定は法人税法上のルールに従って行う必要があります。

以下では、役員報酬の決定方法について詳しく解説します。

 

株主総会での決定

役員報酬は、会社法に基づいて株主総会で決定されます。

株主総会では、報酬の総額が議決され、それをもとに取締役会で役員ごとの内訳が決められます。

株主総会で決定された総額が守られる限り、個々の役員報酬については取締役会の裁量で調整することができます。

株主総会で決定された役員報酬は、会社設立日・事業開始日から3ヵ月以内に行われるべきであり、変更は年1回の期間に限られます。

変更の際には、再び株主総会を開催し、決議を経る必要があります。

これは、取締役自身が役員報酬決定を自由に決定すると、会社の利益が害されることがあるため、これを防止できるようにするためです。

 

税法上のルール

役員報酬を損金算入するためには、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与の3種類のいずれかの方法で支給する必要があります。

定期同額給与は毎月一定金額を支払うことで損金算入できますが、報酬額の変更には限定があります。

事前確定届出給与や業績連動給与は、税務署に届け出ることで損金に計上できる一方で、厳密なルールがあるため適切な手続きが求められます。

同族会社の場合は、業績連動給与が損金算入の対象外となりますので、特に注意が必要です。

また、役員報酬が不相当な高額であると判断された場合、損金算入が認められないケースがありますので、相場や他社との比較を行い、適切な報酬を設定しましょう。

 

源泉徴収・社会保険料の影響

役員報酬からは、源泉所得税額や健康保険・厚生年金保険を控除する必要があります。

役員賞与として事前確定届出給与を支給することで、健康保険・厚生年金保険などの社会保険料を削減するスキーム利用が増えておりますが、非常にリスクが高いため税理士等の指導の下、メリット・デメリットを含めて検討するようにしましょう。

ここでは、役員報酬に関する源泉徴収や社会保険料の影響について詳しく解説します。

 

源泉徴収

役員報酬は源泉徴収の対象であり、2か所給与等がある場合は確定申告は必要になります。

源泉所得税は、給与の額や主たる給与(メインの給与)なのか、従たる給与(サブの給与)なのかにより徴収税額が大きく変わります。

また、役員報酬の全額に源泉所得税が適用されるわけではなく、社会保険料等を控除した後の金額に対して源泉所得税が課されます。

確定申告が必要な場合は、役員報酬のみならず、配当所得や譲渡所得など、その他の所得も含めて申告する必要がありますので、適正な申告をするようにしましょう。

 

社会保険料の影響

社会保険料には上限があるため、月額を減らして事前確定届出給与(賞与)を支給することで社会保険料に差が出ることもあります。

ただし、社会保険料は報酬額に応じて増減するため、適切な報酬設定が重要です。

借上げ社宅制度を利用すると、役員の家賃負担が5割以下になり、会社としても経費に計上できます。

出張旅費による日当も社会保険の対象外であり、所得税や住民税もかかりません。

役員報酬は会社経営にも大きな影響を与えるため、税理士と相談しながら適切な報酬を決定しましょう。

 

役員報酬と所得税の関係

役員報酬が増加すると所得税が増えるため、報酬設定時にはトータルでの納税額も考慮する必要があります。

ただし、所得税を節約する方法もあるため、それらを活用し適切な税負担を把握しましょう。

以下では、役員報酬と所得税の関係について詳しく解説します。

 

所得控除を活用する

役員報酬が増えると所得税が増加しますが、所得控除を活用することにより、実質的な税負担を軽減することができます。

所得控除には、扶養控除、社会保険料控除、小規模企業共済掛金控除などがあり、適切に活用することで所得税負担を軽減できます。

例えば、給与所得控除は所得税法で定められた一定額が控除されますが、小規模企業共済掛金控除は、将来の積立を行うことでその掛金が所得控除になる制度です。

役員自身の所得税を節約するためには、このような控除を適用可能な範囲で報酬設定を行うことが望ましいです。

 

まとめ

本記事では、役員報酬に関する基本的な知識や決定方法、損金算入要件などについて解説しました。

役員報酬の設定は、経営者自身の所得や会社の税負担に大きな影響を与えるため、適切な報酬設定を行うことが重要です。

また、会計ソフトや顧問税理士と連携することで、適切な報酬設定や税務処理を行い、経営者・役員の所得税負担を最適化することができます。

最適な役員報酬設定により、会社の経営をより良い方向へと導いていきましょう。

 

よくある質問

1. 役員報酬の決定方法はどのように行われますか?

役員報酬の決定方法は、株主総会と取締役会での決議を経て行われます。

株主総会で報酬の総額が議決され、それをもとに取締役会で役員ごとの内訳が決められます。

 

2. 役員報酬はどのように損金に計上されますか?

役員報酬を損金に計上するためには、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与の3種類のいずれかの方法で支給する必要があります。

 

3. 役員報酬と所得税の関係はありますか?

役員報酬が増加すると所得税が増えるため、報酬設定時にはトータルでの納税額も考慮する必要があります。

所得控除を活用することで所得税負担を軽減することも可能です。

 

4. 業界や会社規模によって役員報酬は変動しますか?

業界や会社規模によって役員報酬の相場は異なります。

一般的に金融やIT、製薬業界では報酬が高い傾向にあります。

会社規模が大きいほど役員報酬も高く設定する傾向にありますが、業績や業界の相場にも照らし合わせる必要があります。

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