贈与の課税関係~8つの課税関係についての解説~

はじめに

こんにちは、税理士の佐藤憲亮です。

 

多くの人は、段生活しているなかで、税金について考える機会というのは、そう多くはないでしょうし、課税関係について考えることも少ないと思います。

しかし、税金の話は割と身近な話で、消費者であっても買い物をすれば消費税(相当額)を負担しないといけませんし、贈与や相続があれば、財産に見合った税金の負担をしないといけません。

 

税金の話はなんだか難しくてわからない、と言う方は多いですが、税理士でも分からないことはありますし、分からないことはその都度調べたり、勉強したりすることが必要です。

税法の世界にはいろいろな考え方や解釈があったりと奥が深いんですが、その奥深さがまた面白いところでもあるのかなと個人的には思っています。

 

今日は少し専門的なお話になりますが、そんな税法が面白いと思えるような、税法の奥深さについて少しお話したいと思います。

 

贈与のパターン

例えば、次のような取引があった場合、税法上はどうのように考えるのでしょうか。

取得価額が1億円、相続税評価額(税法上の課税標準)が2億円、時価が3億円の土地を贈与した場合、下記のようなパターンのそれぞれの課税関係はどうなるか?

 

①A個人からB個人へ贈与

②A個人からB法人へ贈与

③A法人からB個人へ贈与

④A法人からB法人へ贈与

 

この問題、横断的な税法の知識がないと間違えてしまいます。

簡単なようで難しい問題で、大学院などの学問の世界でもよく問われ、私も大学院で同じ様なことを問われたことがあります。

問題自体は一事実でシンプルなんですが、贈与の相手別に一つ一つの法律関係の理屈を知っていないと答えがでてこないですし、出てきたとしても整理しないと取りこぼしてしまうことがあります。

 

なんだかワクワクしてきましたね!(しない)

 

下記で、一つずつ見ていきましょう。

 

①A個人からB個人へ贈与

個人から個人へ贈与が合った場合は、もらった個人に贈与税が課されます。

 

A個人 → 課税なし

 

B個人 → 2億円に贈与税が課される(2億円×超過累進税率)

 

ただし、相続税法34条4項には連帯納付の規定がありますので、B個人に財産がなく、贈与税の納付ができなかった時は、Aにも連帯責任が生じていますので、Aが納付する必要があるので注意しましょう。

 

②A個人からB法人へ贈与

個人から法人へ贈与が合った場合は、もらった法人に受贈益として法人税、あげた個人にみなし譲渡による所得税が課されます。

 

A個人 → 時価により売却したとみなされ、3億円(時価)-1億円(取得価額)=2億円×一定税率の所得税が課される。(所得税法59条)

 

B法人 → 時価によりもらったとみなされて、3億円(時価)×法人税率の法人税が課される。(法人税法22条2項)

 

個人にはみなし譲渡という規定があり、不動産等を贈与した場合は、それを時価により売却したととみなして課税がされます。

 

なお、法人は有償・無償に関係なく、受け入れたものは全て時価で益金としなければないけません。

さらにB法人が同族会社の場合は、A個人から土地の贈与を受けたことにより、B法人の株式の価値が増加しますので、A個人からB法人の株主へ贈与があったとみなされます。

 

③A法人からB個人へ贈与

法人から個人へ贈与が合った場合は、もらった個人に一時所得又は給与所得として所得税、あげた法人に譲渡したものとして法人税が課税されます。

 

A法人 → 時価により譲渡したとみなされ、3億円-1億円=2億円×法人税率の法人税が課されます。

 

B個人 → 法人の役員であったり、雇用関係が認められる場合は給与所得、それ以外は一時所得として、3億円×超過累進税率の所得税が課されます。

 

A法人は、法人税法22条2項により、無償譲渡にも課税されることとなります。

なお、無償譲渡にかかる売却代金は、B個人から受領しないので、代金の3億円は「寄付金」又は「賞与」として費用となります。

ただ、寄付金はそのほとんどの金額が、損金不算入(税法上は費用として認められない)ですし、賞与になる場合は、B個人に所得税が課せられますし、B個人が役員であれば、定期同額給与に該当せず損金不算入となってしまいます。

 

また、B個人はA法人との関係により所得区分が変わります。多くの場合は給与所得より一時所得のほうが税負担は少なくなるため、有利となります。

 

④A法人からB法人へ贈与

法人から法人に贈与した場合は、もらった法人に受贈益として法人税、あげた法人に時価で譲渡したものとして法人税が課されます。

 

A法人 → 時価により譲渡したとみなされ、3億円-1億円=2億円×法人税率の法人税が課される。

 

B法人 → 時価によりもらったとみなされて、3億円(時価)×法人税率の法人税が課される。

 

無償譲渡のため、A法人はB法人から代金を受領しないので、その代金3億円が寄付金として費用となりますが、そのほとんどの金額が損金不算入となります。

 

おわりに

本日は、個人と法人取引の課税関係について解説してきました。

 

税法の世界では、同じ内容の贈与契約であっても取引の相手が変われば、課税関係は大きく変わります。

特に「個人から法人への贈与」は気をつけないと取引当事者だけでなく、他の株主にも贈与認定がされることもあります。恐ろしいですね。

 

これを面白いと捉えるのかは人それぞれですが、私としては奥が深いなぁと思うわけです。

長くなりましたが、今日はこのあたりで。