こんにちわ。
税理士のさとうです。
先日、所得税基本通達35関係の改正案が公表され、パブリックコメントの募集が開始されました。
この改正案は、近年事業と呼べない副業的な事業所得が増え、青色申告控除や損益通算を適用して所得を圧縮している事例が増えたことが原因だと考えられますが、今回、この通達が改正されることにより、上記事例の増加に歯止めをかけることが目的だと言えるでしょう。
そもそも通達とは何なのか。
今日は、通達の意義についてお話していきたいと思います。
通達とは何なのか?
通達とは、上級機関から下級機関への上意下達の命令文書のことを指し、お役所的には上が決めた税法解釈のルールブックみたいな存在です。
税務職員は税法解釈の際は必ず通達に沿った解釈が必要になりますし、運用も通達に沿って行われます。
税法の世界では税目毎に通達が発遣されて一般に公開されていますので、税理士業務でも一つの解釈指針として大いに参考にします。
納税者が圧倒的に不利になる場合を除き、またその通達の取り扱いが経済的実態に不合理でないとき以外は、通達に沿って処理を行います。
なお、この通達に縛られるのは国税職員だけで、我々国民はこの通達に縛られることはありません。
本来は通達を離れて条文の文理解釈が必要だとは思うのですが、最近は通達改正の際にはパブリックコメントが募集されることが多いので、改正された通達には一般的な意見も取り入れられており、国民の総意を得ているという解釈も可能かなと思います。(全部が全部そうではありませんが)
ということは、国民にとっての通達とは、絶対的なルールブックではないけれど、通達解釈を離れた処理を行う根拠がない限り従うべき指針と言えるでしょう。
国民は通達に従う義務はないので通達に反した処理も可能ですが、それには相当の根拠や理由が必要で、根拠がない処理にはリスクがあるということです。
法律には、一般的基準の設定にとどまるという制約がある。抽象的法律は、法を執行する行政庁の解釈を媒介とすることによってのみ具体的に国民を拘束する。
国民の権利義務に深い関係をもつ税務行政においては、租税法律主義の建前がとられているが、現実には行政庁の解釈基準を示す無数の通達などによって行政が行われている。
税務通達は税務の現場においては重要で、ある意味では法以上の機能を果たしている。現行行政は法律によるものではなく、通達行政だともいわれる。
通達を味方につける
見方を変えると、税務職員は通達に沿った考え方しかしないので、国側の考え方が事前にわかっているということになりますし、逆に通達を武器に有利な処理をすることも可能です。
通達に従うのであれば税務職員と一緒じゃないかと思うかもしれませんが、税務職員は納税者に有利な通達の存在を教えてくれません。
むしろ国側が有利になるよう通達を盾に理論武装してきます。
通達は星の数ほどある(言い過ぎ)ので、その全部を理解することは不可能ですが、顧客の事例に関する条文を当たっていくと、その解釈である通達も必ず確認することになるので、通達は重要な存在です。
なので税理士は、通達が改正されたり改正案が出たりすると、その影響を顧客に当てはめ、また全体の影響などを考えて騒ぎ出します笑。