税理士試験と大学院免除にかかる時間とお金の比較
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この記事の目次

はじめに

税理士試験と大学院。どちらが効率的なのか。

 

これら二つの手段は、必要な時間と必要なお金で大きく異なりますが、選ぶ科目や選ぶ大学院によって条件が大きく異なるため、一概にどちらを選択するのがいいとは言えません。

 

このような理由から比較をするのは難しいんですが、私は税理士試験を10年以上受けてきて、現在大学院に在籍していますで、自分を基準として比較することはできるかなと。

 

そこで今回は、税理士試験と大学院に係る「時間」「お金」「確実性」について比較をしてみたいと思います。

 

本記事はかなり長くなってしまいましたので、とりあえず比較した結果から。

 

税理士試験と大学院にかかる➀時間➁お金➂確実性について比較した結果、

①時間は税理士試験のほうが必要。

②お金は大学院のほうが必要。
(機会損失を含めるとほぼ変わらない場合もある。)

③確実性は大学院のほうがある。

という結論になりました。

結果だけ見ると、まぁそうかなと。だた、➁のお金については、税理士試験も大学院も変わらない場合があり、数字的には意外な結果となりました。

 

本記事では、➀時間➁お金➂確実性についてのみ比較していきます。大学院と税理士試験の並行の可否については、こちらを参考にしてください。

 

以下、詳細を見ていきます。

 

時間

税理士試験

前提として、税理士試験科目の法人税を初学者が受験する場合を考えていきます。

 

大手税理士試験受験予備校で推奨されている、法人税法初学者の年間勉強必要時間の平均は、600時間(理論暗記時間は含まない)と示されています。

 

・・・かなり少ないですよね。

確実に受かるならこの倍近く必要じゃないでしょうか(実際、それぐらいやった人から受かっていくのを見てきました)。

 

ということで、以下私が必要と考える(可能な)時間を基準として見積もってみます。

 

①講義時間

講義は9月~7月(11か月)の通学クラス(週2回講義、1コマ3時間)とします。

3時間 × 2日(週)× 4週(月)× 11か月 = 264時間

予備校よって講義時間は異なりますが、法人税法の講義時間は年間264時間となりました。

 

②自主勉強時間

9月~4月(8カ月)の通常講義の期間は、週2日講義があり、週3日1日4時間(私が平日に取れる現実的な勉強時間)を自主勉することにします。現実には週3日しか勉強しないわけではないですが、平均すとこれくらいかなと。そして、5月~7月の直前期間は、講義の有無に関係なく週6日の1日4時間自主勉することにします。

(ア)9月~4月 ⇒ 3日(週)× 4週(月)× 8カ月 = 96日

(イ)5月~7月 ⇒ 6日(週)× 4週(月)× 3か月 = 72日

(ウ)(ア)+(イ)= 168日 × 4時間 = 672時間

 

「もっと勉強できるだろう!」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、私はできたとしてもこれくらいが限界です。「だから合格できないだ、ちみは!」そんな声が聞こえてきそうです笑。

 

③合計

① + ② = 936時間 + 8月の直前期 = 1,000時間

 

個人によって差はあると思いますが、年間勉強時間は936時間となりました。ただ、私の場合は8月の本試験までの1週間は仕事を休んで勉強に専念していましたので、その分を加算して1000時間としました。

 

大学院

大学院では、授業を受けて一定以上の単位を取得する必要があります。私の通う大学院では、2年間で32単位の取得が必要なので、これを前提とします。

 

なお、授業は1コマ1時間30分で、これが半期で15回、1科目2単位換算です。そして、32単位の内8単位は論文指導に関する単位なので、実質取らないといけない授業数は12となります。(32 - 8 = 24 ÷ 2 = 12)

 

また、授業とは別に2年間で論文を執筆しないといけないので、論文執筆時間も見積もっていきます。

 

①授業時間

授業は、実際の授業時間と課題や予習復習の時間が必要です。授業時間は前述の通り1時間30分。課題・予習復習も授業によってまちまちなんですが、平均すると大体1コマ2時間くらい必要です(大変な課題は丸一日、丸二日かかったりします)。私の場合は、これ+2単位を1年間で取得しました。

(ア)授業時間 1.5時間 × 15回(半期)× 12科目 = 270時間

(イ)課題・予習復習 2時間 × 15回 × 12科目 = 360時間

(ウ)(ア)+(イ)= 630時間

 

②論文執筆時間

論文執筆には、参考文献を集めたり、書籍や論文を読んだりする時間も含めていきます。私は昨年の10月から論文を書きはじめ、最終の提出が来年の1月の初旬となりますので、昨年の10月から今年の12月まで(450日)の時間を集計していきます。

 

テーマや人により必要な時間は異なりますが、私の場合、論文執筆、論文指導、資料収集等で、平日は1~2時間、休日は丸一日時間を使うこともあり、平均すると1日2時間くらいは論文に時間をかけているかなと思います。

 

2時間 × 450日 = 900時間

 

③合計

① + ② = 1,530時間

 

小括

税理士試験は1科目(1年間)にかかる時間が、1,000時間。大学院は2科目(2年間)にかかる時間が1,530時間となりました。

 

基準を同じにするために、税理士試験の1,000時間を2科目分(2年分)にします。

⇒ 1,000時間 × 2年 = 2,000時間

 

税理士試験 2,000時間 : 大学院 1,530時間

(それぞれ2年間で)

 

人によって前提が変わるので一概には言えませんが、この条件では、ボリュームの大きい税法科目2科目を受験するよりは、大学院に行った方が時間的には短縮できるという結果になりました。

 

ただ、上記の見積もり時間は、いずれにしても私が取り組んだ場合の時間なので、人によって異なることは念頭に置いておいてください。

 

お金

続いてお金について比べていきます。

 

税理士試験予備校の授業料について、科目により違いはありますが、大手の予備校で年間25万円くらい。これに対し、大学院の授業料は、これも大学院により違いはありますが、年間65万~100万(もっと高いところもありますが、私のところは年間65万くらいです)。

そうすると、どちらも2年で終わることができた場合は、税理士試験は2年間で50万。大学院は2年間で130万~200万。

 

授業料は大学院の方が高いことが分かります。

 

学費だけを比較すると、税理士試験の方が安く、大学院の方が高いのは一目瞭然なんですが、先に示したように、それぞれ科目合格(免除)ができるまでに必要な時間が違います。

 

このままでは比較しづらいので、全てを同じ基準で比較するという意味で、時間をお金に換算してみます。

 

それぞれに必要な時間を機会損失(もし働いていたとしたらいくら稼げていたのか)と考えて、仮に時給1500円(ネットで検索すると、税理士事務所のパート時給は1,000円~1,800円くらいが多かった)として計算してみます。

税理士試験 2,000時間 × 1,500円 = 300万円

大学院   1,530時間 × 1,500円 = 230万円

注意)
これは、あくまで比較しやすくするため、時間をお金に換算しただけなので、実際にこれだけの金銭的な損失があるという意味ではありません。

 

これを授業料と合算してみましょう。

税理士試験 50万 + 300万 = 350万

大学院  130万~200万 + 230万 = 360万~430万

私が主観的に決めた条件とはいえ、意外な結果です。

 

機会損失を含めると税理士試験と大学院の負担は、「あまり変わらない場合もある」という結果になりました。

 

皆さんはこれをどう考えるでしょうか?

 

お金については以下の記事で詳細を書いていますので、これらも参考にしてください。

 

確実性

理士試験は2,000時間勉強して受験したとしても、1科目の合格率は約10%。その約10%に入れるかどうかは「当日のコンディション」や「出題される問題との相性」という要素もあるので、確実性はありません。

 

大学院も「教授の相性」等の他の要素があるので100%修了できるとはいえません。ただ、教授の指導に従い真面目にやっていれば、よっぽどでない限りは2年間で修了できます。

 

なお、税理士試験は落とすための試験なのに対して、大学院はどちらかというと合格させるための制度というところも大きな違いであると思います。

また、どちらも不正があればダメなのは同じです。

 

そう考えると、2科目取得する確実性としては大学院の方が高いといえます。

 

おわりに

今回は、税理士試験2科目合格と大学院2科目免除にかかる「時間」「お金」「確実性」について比較してきました。

比較の結果

①時間は税理士試験のほうが必要。

②お金は大学院のほうが必要。
(機会損失を含めるとほぼ変わらない場合もある。)

③確実性は大学院のほうがある。

という結論になりました。

 

人により前提や条件が違うので、正確に比較できたわけではありませんが、一つの見方として参考にしてもらえたらと思います。

 

税理士試験と大学院

私は税理士試験を受けなくなってしばらく経ちますが、未だに本試験前になるとソワソワしてきて、過去受けてきた試験のことが思い出されます。

 

私が試験合格できたのは3科目しかありませんが、合格した年というのは、自分の限界までやったという思いがあり、本試験で試験官の「止め」の合図を聞いて、無事に試験会場から退出できた瞬間に涙が出そうになっていました笑。今思えば、合格できた年はやり切った感を認知でき、1年間を無駄にせずに受験できたという安堵感があったのかなと。

 

私は税理士試験で3科目合格するのに10年以上かかっています。もっと1年1年集中して試験を受けていれば、結果は違ったのかもしれません。

大学院は決して逃げのルートではありません。試験・大学院の両方を知った上で、自分にとって最善の選択ができるようにしましょう。

 

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