法人成り(個人事業を法人化)するタイミングは?

はじめに

こんにちは、税理士の佐藤憲亮です。

 

個人のお客様と話をしていると、よく聞かれるのが「会社設立」についてです。

特に、こんなご質問をいただくことが多いです。

①会社設立をする一番のメリットはなんですか?

②資本金っていくらにすればいいの?

③法人成り(個人事業を法人化)するタイミングは?

④会社設立にはどれだけ費用がかかるんですか?

⑤法人成りすると節税しやすいって聞くけどホント?

 

本日は、上記項目の内、③の「法人成り(個人事業を法人化)するタイミングは?」について解説していきたいと思います。

※①と②については、下記を参照ください。

法人成りするタイミング

法人化の一番のメリットは信用力が高くなること(会社設立のメリットとデメリット~信用力の解説を中心に~参照)とお話してきましたが、それ以外にも法人を設立するタイミングというものはあります。
例えば
・今の事業と全く違う分野の事業をはじめるとき
・経営と個人を切り離したいとき
・共同経営を行うなど個人事業者主体の事業でなくなったとき
・事業承継を考えたとき
などが挙げられます。
他にも法人を設立する理由は様々あり、そしてその理由は人それぞれなので一概に述べることはできませんが、よく聞かれる税負担的な損得の話はこれらの理由の後となります。(税負担の多少だけでも法人成りを考えることもありますが)
ただ、法人を設立することを検討する上では、個人と法人で税負担がどのように変わるのかは知っておかないといけない事項なので、ここでは個人と法人の税負担について解説していきたいと思います。

税負担の比較

実際に試算したほうが分かりやすいので、具体的数字を当てはめて計算していきます。
なお、ここでは個人の所得控除は青色控除と基礎控除のみとし、事業所得と給与所得の税負担比較をしていきます。
個人の事業所得は超過累進税率(課税標準が一定額を超えた場合、その超えた金額に対してのみ高い税率を適用する方法)を乗じて税額を計算するのに対し、法人の所得は一定税率(ここでは22%と仮定します)を乗じて税額を計算しますので、この税額計算の方法の違いにより税負担が変わってきます。
下記、利益金額別、所得分類別に税負担を見ていきます。
①利益が500万円
(1)個人事業の場合
所得税 (500万ー青色申告控除65万ー基礎控除48万)×20%-42.7万=34.7万
住民税(500万ー青色申告控除65万ー基礎控除43万)×10%=39.2万
事業税(500万ー事業主控除290万)×業種別税率5%=10.5万
合計=84.4
(2)法人成して給与を500万とした場合(個人給与500万、法人所得0)
所得税(500万ー給与所得控除144万ー基礎控除48万)×10%-9.75万=21万
住民税(500万ー給与所得控除144万ー基礎控除43万)×10%=31.3万
法人税等均等割(資本金1,000万以下、従業員50人以下) 7万
合計=59.3
②利益が1,000万円
(1)個人事業の場合
所得税 (1,000万ー青色申告控除65万ー基礎控除48万)×23%-63.6万=140.4万
住民税(1,000万ー青色申告控除65万ー基礎控除43万)×10%=89.2万
事業税(1,000万ー事業主控除290万)×業種別税率5%=35.5万
合計=265.1
(2)法人成して給与を1,000万とした場合(個人給与1,000万、法人所得0)
所得税 (1,000万ー給与所得控除195万ー基礎控除48万)×23%-63.6万=110.5万
住民税(1,000万ー給与所得控除195万ー基礎控除43万)×10%=76.2万
法人税等均等割(資本金1,000万以下、従業員50人以下) 7万
合計=193.7
(3)法人成して給与を500万とした場合(個人給与500万、法人所得500万)
所得税(500万ー給与所得控除144万ー基礎控除48万)×10%-9.75万=21万
住民税(500万ー給与所得控除144万ー基礎控除43万)×10%=31.3万
法人税等 500万×実効税率約22%+均等割7万=117万
合計=169.3
上記、①の比較では法人成りした方が約25万税負担が軽減でき、②の比較では(1)(3)で約95万円の税負担を軽減できることが分かりました。
以上の様に、毎期継続して利益が500万以上出るのであれば、法人成りをしたほうが税負担は減りますが、法人の設立費用、事務負担が増える、社会保険への強制加入のことを考えれば、金銭的メリットはあまりないかと思います。(ケースバイケースではありますが)

おわりに

個人事業で売上高が1,000万円を超えた場合は、その2年後から消費税の課税事業者となることがあるので、そのときは法人成りすれば、さらに2年間の免税事業者の期間をとれる可能性があります。
また、上記でも述べた通り、法人成りすれば社会保険に強制加入となりますので、社会保険料の負担のことも考えておかないといけません。
このように、単純に目の前の税負担比較だけでは個人と法人のどちらがいいかを比較しきれない部分もありますので、金銭的な損得だけではなく、法人を設立して何をしたいのかを考えることが大事です。
そして、このような複雑な計算は自分ではできません。
税金の話だけではなく、知らないでやっていると色んな場面で損をすることになりかねませんので、後悔しないためにも法人設立をするなら、まずは専門家へ相談することが重要です。